
在宅ワークの普及や、防音・断熱への関心の高まりから、お住まいの部屋に二重窓を取り入れたいと考える方が増えています。
しかし、貸主に許可を取らずに勝手に工事をして良いのかどうか、迷われる方も多いと思われます。
後になって発覚した際のリスクや、引っ越しをする際に高額な費用を請求されるのではないかと不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、アパートやマンションなどの賃貸住宅における窓回りのルールと、承諾を得ずに行った場合のリスク、そして退去時にかかる費用の考え方について詳しく解説します。
この記事をお読みいただくことで、予期せぬトラブルを未然に防ぎ、安心して快適な住環境を整えるための正しい知識を身につけることができます。
賃貸物件における窓回りの無断リフォームは原則として認められません

結論から申し上げますと、賃貸物件において貸主の許可を得ずに内窓を設置する行為は、原則として避けるべきとされています。
部屋を借りている入居者さんには、退去する際に部屋を借りた時の状態に戻して返還する「原状回復義務」が課せられています。
そのため、契約で定められた仕様を個人の判断で勝手に変更する行為は、無断改造や無断リフォームとみなされる可能性が高いと考えられます。
特に、窓ガラスやサッシといった建具は、建物全体の一部として扱われることが一般的です。
これらを無断で加工したり交換したりすることは、貸主や管理会社が想定している建物の仕様や性能に反するリスクを伴います。
もし無断で設置し、それが発覚した場合には、元の状態に戻すための修繕工事を借主側の全額負担で求められるのが基本的なルールとなっています。
入居者の判断による設置がトラブルに発展しやすい背景

なぜ、良かれと思って行った断熱対策や防音対策が、大きなトラブルにつながってしまうのでしょうか。
その背景には、賃貸借契約における法律上の考え方や、建物の構造に対する責任の所在が関係しています。
建物の「専有部分」と「共用部分」の考え方
マンションなどの集合住宅において、窓ガラスやサッシは「専用使用権のある共用部分」として扱われることが一般的です。
室内側にあるからといって入居者さんが自由にして良いわけではなく、建物の外観や構造に関わる重要な設備とされています。
そのため、貸主の承諾なくビスを打ち込んだり、枠を加工したりする行為は重大な契約違反と評価される可能性があります。
国土交通省のガイドラインにおける原状回復の基準
退去費用の算定にあたっては、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が広く参考にされています。
このガイドラインでは、退去時の修繕費用について以下のように整理されています。
- 家具の設置による床のへこみや、日照りによる壁紙の変色など、通常の生活で生じる「通常損耗・経年劣化」は貸主の負担とする。
- 入居者の不注意や、通常の使用方法を超える使い方によって生じた「故意・過失による損耗」は借主の負担とする。
無断で窓回りの工事を行い、窓枠に穴を開けたり傷をつけたりした場合は、後者の「故意による損耗」に該当すると判断される可能性が極めて高いです。
したがって、その補修にかかる費用は入居者さんの自己負担となると考えられます。
貸主側の無断リフォームに対する警戒感
近年、DIYの流行に伴い、賃貸物件での無断リフォームによるトラブルが増加傾向にあります。
管理会社やオーナーさん向けの専門サイトなどでも、入居者による無断の設備変更に対しては、原状回復費用を厳格に請求するよう推奨されることが多いようです。
極端なケースであり、契約書に厳しい禁止事項が明記されている場合においては、最悪の場合は賃貸借契約の解除事由になり得るとの専門家の指摘もあります。
実際に無断設置が発覚するタイミングと想定される費用の実例
「きれいに取り付けて、退去時に自分で外せばバレないのではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実務上は様々な場面で貸主側に知られるリスクが存在します。
ここでは、発覚しやすいタイミングと、それに伴って発生し得る退去費用の具体例を解説します。
定期的な巡回や法定点検の際に目視で発覚するケース
マンションやアパートでは、年に数回、消防設備点検や排水管の清掃などで業者が室内に入ることがあります。
また、建物の不具合に対する調査などで管理会社が訪問することもあります。
このようなタイミングで室内に立ち入った際、本来あるはずのない二重サッシが目視で確認され、無断設置が発覚するというケースが報告されています。
点検業者が直接管理会社に報告しなくても、後日何らかの修繕等でオーナーさんが確認した際に問題となる可能性があります。
退去時の立ち会い検査で痕跡が発見されるケース
最も発覚しやすいのが、部屋を明け渡す際の退去立ち会い時です。
管理会社やオーナーさんは、次の入居者さんに貸し出せる状態かどうかを細かくチェックします。
- 追加で取り付けられたサッシやレールの存在
- 撤去した後に残されたビスの穴
- 強力な両面テープを剥がした際の塗装の剥がれや木枠の損傷
これらは専門の担当者が見ればほぼ確実に発見されます。
「簡易的なものだから大丈夫」と思っていても、撤去時に痕跡が残ってしまえば、そこから無断加工が露見してしまいます。
本格的な工事が必要なタイプで高額な請求を受けたケース
窓枠に直接ビスを打ち込んで固定するタイプの本格的な製品を無断で設置した場合、退去時のリスクは非常に大きくなります。
撤去した後のビス穴を補修するだけで済めば数千円から数万円程度で収まる可能性もありますが、パテ埋め等の補修では見栄えが悪く、次の入居者への貸し出しに影響が出ると判断された場合、対応が変わってきます。
専門業者の見解によれば、窓枠全体を新しいものに交換する必要が生じた場合、数万円から十数万円レベルの請求に発展するリスクがあるとされています。
断熱や防音の効果は高いものの、無断で行うにはあまりにも代償が大きいと言えます。
工具不要の簡易タイプでも修繕費用が発生するケース
最近では、壁に穴を開けない突っ張り棒方式のものや、既存の窓枠にぴったりはめ込むだけのポリカーボネート製の簡易的な製品も市販されています。
これらは建物を傷つけない範囲のDIYとして、実務上はグレーゾーンとして扱われ、撤去時に完全に痕跡が消えていれば問題視されないケースもあるようです。
しかし、寸法を誤って無理に押し込んだ結果、既存の木枠を歪ませてしまったり、結露の発生によって周囲の壁紙にカビを発生させてしまったりした事例もあります。
このような二次的な被害が生じた場合も「通常使用を超える損耗」とみなされ、壁紙の張り替え費用や木枠の修繕費用が退去費用として上乗せされると考えられます。
窓回りの変更に伴うリスクと負担の考え方について
ここまで解説してきたように、お部屋の窓回りに手を加える行為には様々なリスクが伴います。
賃貸物件でのルールの基本を再度整理しておきましょう。
- 窓ガラスやサッシは建物の一部であり、個人の判断による変更は無断リフォームとみなされます。
- 点検時や退去時の詳細なチェックにより、工事の痕跡は高い確率で発覚します。
- ビス穴の補修や枠の歪みなど、原状回復にかかる修繕費用は借主の負担となるのが一般的です。
- 損傷の程度によっては、数万円から十数万円の高額な退去費用が発生する可能性があります。
国土交通省のガイドラインにおいても、入居者の故意による加工や設備の変更は、貸主側が修繕費用を請求できる正当な理由とされています。
無断での設置は、結果として経済的な負担を大きくしてしまう可能性が高いことを十分に理解しておく必要があります。
快適な住まいづくりのために、まずは管理会社へご相談を
防音対策や寒さ対策として、お部屋の環境を改善したいというお気持ちは非常に大切です。
しかし、後々のトラブルや高額な費用の請求を避けるためには、自己判断で進めるのではなく、まずは事前に大家さんや管理会社へ相談することを強くおすすめします。
近年では賃貸物件の価値向上(バリューアップ)の観点から、貸主側も入居者さんの要望に柔軟に対応してくれるケースが増えてきているとされています。
「退去時には指定の業者で原状回復を行う」「費用は入居者負担とするが設置自体は認める」といった条件付きで承諾を得られる可能性もあります。
また、建物の断熱性を高めるために、貸主側の費用負担で補助金を活用したリフォームを提案してもらえるケースもゼロではありません。
無断で進めて不安な毎日を過ごすよりも、しっかりと許可を得たうえで、安心かつ快適な住まいづくりを楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事が、皆様のお部屋づくりの参考になれば幸いです。